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PROJECT05NEW
建築デザイン学科×歴史文化学科×理学部
鉄ってそもそも何だ?
1000年前の技法で“鉄”に挑む。
砂鉄採取から製錬まで
「たたら製鉄」を学生が実践。
プロジェクトの背景
和釘の研究から縁が繋がり、
製鉄体験の構想へ
数年にわたり、建築デザイン学科の江尻研究室で取り組んでいたのは、錆びにくいことで知られるチタンの和様釘(和釘:古くから日本で使われてきた釘)の研究だった。その過程で研究メンバーの目に留まったのは、偶然にも理学部出身者によって書かれた和釘に関する論文。その筆者との繋がりによって、平安時代から続く姫路の甲冑師・鍛冶師である明珍宗敬氏(53代当主)へと、ご縁のバトンが渡された。江尻教授は、明珍氏の工房を何度も訪ね、対話を重ねる中で、「たたら鉄でつくった和釘は、現代のものよりも錆にくい。その鉄が、どのようにつくられるかを見てみては?」と助言を受けた。そして後日、日本古来の鉄づくり「たたら製鉄」を再現する機会に学生と参加し、鉄にもさまざまな性質があり、そこに至るには本来多くの人の手が関わっていたということを目の当たりにした。その体験は、これから建築に関わる多くの学生たちにも、体験を通じて素材を多角的に理解して欲しいという願いへと発展し、本学での「たたら製鉄」の実施を構想しはじめた。
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プロジェクトの流れ
01
歴史文化学、理学、建築学。
3つの学部を
横断するプロジェクトへ
江尻教授は早速、本学での「たたら製鉄」を実現しようと大学に掛け合った。すると、歴史文化学科の德安教授が地理や社会経済的な切り口で「たたら製鉄」について長年研究をしているとの情報を得た。德安教授にこのプロジェクトについて話をすると、鉄の原料となる砂鉄が日本各地で採取されていたことや、中国地方の砂鉄はチタンが少なく製鉄に向いていたことなどを知ることができた。そして、今回はいくつかの異なる地域の砂鉄を用意することに意味があると考え、最終的に成分分析をしようと、土壁の研究で協力を仰いでいる化学生命科学科の菅野教授にも相談を持ちかけた。日本古来の産業「たたら製鉄」がいかにして行われていたのかを歴史的な観点で紐解き、原料やつくられた鉄を科学的に分析し、鉄という素材をさまざまな角度から学ぶことで、建築素材としての理解を深めていく―。和釘の研究を起点として広がった縁によって、異分野のプロフェッショナルたちが手を結び、このプロジェクトが大きく動き出した。
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02
道具をつくり、「小鉄舟」を
復元して挑んだ、複数地域での
砂鉄集め
鉄をつくるためには、原料となる砂鉄を入手する必要がある。複数地域の砂鉄を入手するため、まず学生たちと足を運んだのは、都内からほど近い神奈川 稲村ヶ崎と千葉県 飯岡。「たたら製鉄」で使うことを考えると、数十キロの砂鉄を採らなくてはならないため、事前に学生たちは知恵を絞り、磁石を使った採取の道具や装置をつくって挑んだ。
かつては「たたら製鉄」が盛んだった中国地方の砂鉄も使ってみてはどうか、という德安教授の発案で、島根県弓ヶ浜では市民を巻き込んだワークショップを通して採取をすることになった。そして、德安教授が島根県のたたらの研究者と話す中で、江戸時代に用いられていた「小鉄舟(こがねぶね)」を製作し、使う方向に向かった。江尻研究室の学生たちは、德安教授から、たたら製鉄で使われた砂鉄の多くは、山地を大規模に掘り崩し、選鉱用水路に沈殿させる鉄穴(かんな)流し法によって採取されていたことなどを学んだ。小鉄舟は、砂浜や川底の砂から水を使って比重の高い砂鉄を選鉱する2メートルほどの木製の道具。昔ながらの方法を再現してみようと、過去の資料を元に構造家でもある江尻教授が原寸大の設計図面を引いた。そして、德安教授と一緒に手を動かし、杉材を組み立てて形にしていく経験は、江尻研究室の学生たちにとっても、ものづくりの過程や鉱物採取の原理などを実践的に学ぶ機会となった。
弓ヶ浜ではこの小鉄舟と磁石の2種の方法で採取が行われ、前者では60kgという大量の砂鉄を集めることに成功。採取方法のちがいで、3箇所4種の砂鉄を用意することができた。
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03
身体を動かし、感覚を澄まして
鉄を知る、「たたら製鉄」体験
いよいよ、本学での「たたら製鉄」が実施されることとなった。高温で加熱し製鉄する炉は、ものづくり教育たたら連絡会の指導を受けながら、前日に2基を組み立てた。当日は、本学の建築デザイン学科、歴史文化学科、理学部の学生はもちろんのこと、建築を学ぶ他大学の学生や、鉄鋼などに携わる一般の方など、約140名が参加。たたら製鉄をさまざまな角度から紐解くトークプログラムや、姫路から明珍氏を迎えての鍛冶、小鉄舟状の道具での砂鉄採取、ふいごでの送風などの体験が同時に開催され、さまざまな分野から学び、体験として鉄を理解する盛り沢山のイベントとなった。
今回は、小鉄舟で採取した弓ヶ浜の砂鉄と、磁石で採取した稲村ヶ崎の砂鉄を使い、炉を分けてそれぞれ製鉄した。素材の耐火被覆を知るという意味でも、温度の記録は必要と考え、理学部数物情報科学科の石黒教授に依頼して、専用の装置で炉内温度のデータを取ってもらった。
まずは、木炭を炉に入れて温度を上げ、1000度近くに上げたところで、砂鉄と木炭を交互に入れていく。時折、金属から分離する不純物「ノロ」を炉から出しながら、この工程を繰り返すこと4時間。火が止められると、参加者は炉内から発せられるシジル音に耳を澄ました。そして、木炭を取り出すと顔を出したのは、鉄の塊である「鉧(ケラ)」。マグマのように赤黒く、ゴツゴツと野生的な姿に、一同が歓声を上げた。
これからの展望 TO THE NEXT
原料と鉧(ケラ)を
産地ごとに成分分析し、
科学的アプローチで
鉄を深掘りする
たたら製鉄の実施が、このプロジェクトのゴールではない。後日、飯岡と弓ヶ浜で磁力採取した砂鉄でのたたら製鉄も進め、地域と採取方法のちがいによる4種の砂鉄と4種の鉧(ケラ)を、理学部の協力のもと、X線を当てて成分分析をする。それによって、原料のちがいによって、できあがる鉄の純度にどのようなちがいが生じるのか、その裏付けを取るべく科学的にアプローチをしていく予定だ。また、弓ヶ浜の砂鉄から製鉄した鉧(ケラ)は、米子市へ「産地返還(里帰り)」させる地域連携も予定している。単なる建築資材だと思っていた鉄が、地球に酸素が生まれた歴史と繋がる自然素材であり、かつては人の手によってつくられてきたという気づきを得て、学生たちの視点は広がり、意識は大きく変わっていく。