建築
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建築デザイン学部

概要と開催意図について
5作品のプレゼンテーション
審査結果の発表/審査員および受賞学生のコメント
総評

2025.10.25 Sat.

建築デザイン学部


樟渓館リニューアル
アイデアコンペティション

学生交流プログラム

2025年10月25日(土)、成瀬記念講堂にて「樟渓館リニューアルアイデアコンペティション」の公開審査会を開催しました。
歴史ある樟渓館をより良い学習環境にするために、同館の教室「ワークショップA」の家具デザインと空間デザインを募集。5組6名の学生から応募があり、金賞1点と銀賞1点を選出しました。審査委員長は、特別招聘教授の東利恵先生。審査員は、東先生とともに施設のリニューアルを担当するキャズ・T・ヨネダ特任准教授、建築デザイン学科長の片山伸也教授、江尻憲泰教授が務めました。

日本女子大学 建築デザイン学部

特別招聘教授 東 利恵

日本女子大学家政学部住居学科卒業後、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了、コーネル大学建築学科大学院修了。東 環境・建築研究所代表取締役。「星のや」をはじめとする宿泊施設のほか、個人住宅や集合住宅、商業施設など幅広く手がける。主な作品に「星のや軽井沢」「星のや富士」「星のや東京」「星のやバリ」「星野温泉 トンボの湯」「ハルニレテラス」など。主な出版物に『「塔の家」白書』(共著、住まいの図書館出版局)、『収納のデザインと工夫』(共著、彰国社)などがある。

概要と開催意図について

東先生

樟渓館のリニューアルは、私とキャズ先生が中心となって考えながら、ほかの先生方からもご意見をいただいています。加えて、学生自身もどのような空間が理想的かを考える機会になればと思い、コンペティションを実施することになりました。家具を使った空間づくりを基本にして、エスキースやプレゼンテーション、全体講評のあり方に関するアイデアのほか、スタジオのあり方をも変えてしまう提案に期待しています。映像も残しますので、コンペティションに参加していない学生にも見ていただいて、意見を聞きたいと思っています。

5作品のプレゼンテーション ▼

「境界がつくるスタジオ」

3年 Mさん

「境界が作るスタジオ」をコンセプトに3つの案を考えました。1つ目は、プレゼンボードを掲示できる可動式パーティションです。床面と天井にレールを設置し、講評時は外壁側に配置。エスキース時はグループ分けのために移動でき、ルーバー状に固定して抜けのある空間を構成します。ルーバーの角度は60度とし、パーティションを越えて視線が合わないようにします。素材には断熱性のある木材を使用し、空間の温かみを感じさせます。2つ目は自然光を取り入れることです。講評時に窓の前に並べたボードは、講評時以外は可動式パーティションを活用し、複数箇所に重ねてまとめます。これによって開口前の空間を開け、外光を取り入れます。3つ目は背もたれのある椅子です。かつ回転式の座面とし、メモを取りやすいよう収納式のテーブルも付けます。ただ、重量が増えるため、プライウッドなどの強度と軽さを兼ね揃えた材料を活用します。

東先生
ボードの置き方は現状に近いですが、今も柱形を避けるために無駄になっているスペースがありますので、この改善提案もあると良かったです。また、ボードの裏側に道具や模型を置くなど、もっと展開できることもあると思いました。
キャズ先生
パネルやルーバーがどう動くのかが明記されていると良かったです。高い精度が必要ですので、ディテールが気になりました。簡便な移動方法があれば、パネルを自由に配置して空間を仕切ったり、窓際での斜光に使えたりするバリエーションも生まれると思います。
片山先生
堅実かつ現実的な案ですが、もっと可動域を広げれば、さまざまなレイアウトに対応可能だと思います。椅子はどこかに寄せるか、スタッキングができた方がいいと思いますし、仕組みが複雑になりますので慎重に考える必要があります。
江尻先生
パーティションを上下で吊るアイデアは有効ですが、グループ内での会話が他のグループの会話を遮らない厚みのパーティションとなると収納スペースも必要なため、具体的な材料を考えられると良かったと思います。
「教室の横利用/木の家具/可動式パーテーション/模型棚」

4年 Tさん

教室の横利用、木の家具、可動式パーティション、模型棚を提案します。まず、教室の縦利用では前方と後方で教員との距離の差が生まれますが、横利用なら教員と学生がコミュニケーションを取りやすくなると期待できます。家具には保温性に優れた木材を使用し、季節を問わず快適に過ごせる環境を整えます。木製家具は五感に良い影響を与え、心理的にも良い効果を生みます。次に、エスキースや講評会、講義形式にも対応する可動式パーティションです。ホワイトボードとしても利用できるように加工するほか、マグネットにも対応する素材にすれば、図面などの掲示にかかる時間を短縮でき、スムーズな進行につながります。模型棚はA0サイズが入るものとします。大きい模型を作った際、模型が壊れる心配をせずに置ける場所が少ないと感じているからです。

東先生
窓側の廊下的な空間の意図や効果が分かりにくいですが、何かを並べたり動かしたりすることで、今までと違うスタジオの形態にできそうです。ただ、パネルをどう自立させるかは課題です。
キャズ先生
棚の縦材の間隔とパネルの幅を均一にすれば、模型棚にパネルをカバーとして収納したり、そのパネルでプレゼンテーションの場を作れたりもします。パネルと棚のモジュール化という概念ができますので、可動方法とは別の目線で面白い展開が可能だと思います。
片山先生
可動式パーティションを自立させるには、ローテーブルなどとユニット化させる仕組みもいいと思います。廊下的な空間はバックヤードとして次の発表の準備などをする使い方ができますし、とても面白いと思います。
江尻先生
パーティションを使って部屋の中にいろいろな空間を作り出せるほか、光の取り入れ方の工夫もできると思います。気になったのは、パースに描かれている人物の多くが外国人男性だったことです。
「多層の記憶 ~行為が空間を形成するスタジオの再定義~」

4年 Wさん

「時間の蓄積」をコンセプトに、収納・作業エリア、可動式パネル、机の3つを提案します。収納・作業エリアは、小上がりと収納、そして和洋対応デザインの机を一体化させます。模型棚は、学生の個人プロジェクトを展示・管理できる場所として機能させます。可動式パネルは、角度や位置を自由に変えられる吊り下げ式とします。360度回転可能とすることで、エスキース時には空間の境界を作ることができ、パネルを教室の左右に分けて大教室の形にすることもできます。これらを組み合わせれば、講評会でも1人ひとりが十分な掲示場所を確保してプレゼンできます。通常時は参考作品や、コンテストでの受賞作品の図面などが並ぶアーカイブになります。机は、カッターマットが埋め込まれたものとすることで、講評会の際に作品を際立たせます。

東先生
「吊り下げるパネル」で思い出したのが、ロットリングや定規などを天井から吊り下げていたというル・コルビジェのオフィスです。この案の天井からパネルを吊る発想も、良い切り口だと思います。
キャズ先生
非常にコンセプチュアルな提案でした。小上がりのスペースは、卒業制作用のスタジオや院生室などでも機能を発揮できると思います。ただ、家具のデザインで注意すべきは、身体的なアフォーダンスです。ミリ単位の世界ですので、ディテールをさらに詰めていくとより良いと思います。
片山先生
可動式パーティションによって、少し前までは学生が寝転がっていたような小上がりの空間が、エスキース空間やレクチャー空間に変わるというストーリー展開を感じさせる提案でした。
江尻先生
歴史ある樟渓館の特徴的なつくりと、回転式パーティションの新しさが対比的に見えるデザインだと思います。
「A classroom that moves with you」

修士2年 Aさん

「A Classroom That Moves With You(あなたに合わせて動く教室)」というコンセプトで、学生が空間に合わせ続けるのではなく、空間のほうが学生に適応する教室をデザインしたいと考えました。カッターやローラー、接着剤、模型制作のためのさまざまな材料など、多くの道具を使う学生のために提案するのが、収納性・柔軟性・可動性を兼ね備えた多機能テーブルシステムです。あわせて、座面が360度回転しキャスター付きのスツールを導入することで、学生が簡単に振り向いたり、グループ間を移動したりでき、円滑なコミュニケーションと協働を促します。テーブルのサイズは幅2メートル、奥行き1.3メートル、高さ0.75メートルで、1台につき10人、両側に5人ずつが着席できます。さらに可動式のパーティションパネルを導入し、空間を2つの機能的なゾーンに分割することで、必要に応じて独立した2教室としても、一体的な大空間としても柔軟なレイアウト変更が可能です。

東先生
いろいろな使い方ができる可動家具がとても面白いです。ただ、学生は自分の家の自分の机は丁寧に扱っても、学校や公共の場所にあるものは乱暴に扱いがちです。それゆえ、いかに壊れにくくするかが重要です。
キャズ先生
パネル変調ではなく、使い方に応じて可変するテーブル変調という点が面白く、今までと違う視点だと思います。この概念を一歩先に進め、椅子やパネルなどにも展開させていくと面白いと思います。
片山先生
机がコンパクトなときに120名が入り、少人数での作業時は机が最大限開く提案だと、余裕のある気持ちいい空間を表現できたと思います。パネルは自立しますし、面白い家具を提案してくれました。
江尻先生
最初に問題点を挙げ、次に解決のためのアイデアが生まれたきっかけ、その後に具体的な自分のアイデアと使い方を紹介する流れが、わかりやすくまとめられていました。
「Workshop A」

修士1年 Cさん・Hさん

本デザインは、空間と幾何学の関係性を探究し、学生にとってより良い学習環境を創出することを目的とし、現在抱えている課題に応えるだけでなく、学生の探究体験そのものを高めるデザインの実現を目指しています。
最初のデザイン要素では、天井、照明、展示空間に焦点を当て、グリッドシステムを導入しています。さらに、調整可能な照明システムを設計し、学生が自身のプロジェクトに合わせて照明を追加したり移動させたりできるようにしました。次に、室内を緩やかに分節するため、二本の柱を新たに配置しました。この構成は、将来的に計画している家具デザインとも連動する予定です。最後にマットな金属材の棚を外壁側に配置。見た目が美しく整理されるだけでなく、日射を調整することで室内を快適な温度に保ちます。また、ニーズに合わせて動かせる可動式とするほか、模型などの収納を考慮して幅は60cmとします。その他、テーブルや椅子は人数や授業形態によって自由に配置。学生が自ら空間を作ることで創作意欲を高められる場を目指します。

東先生
断熱のために六角形の棚を使う点が面白く、光の入り方も非常によく考えられていると思います。ただ、カフェのようなレイアウトだと感じたほか、中央にある柱もリニューアルに必要というよりも、自分たちのデザインコンセプトを通すための提案という印象を受けました。
キャズ先生
窓際の作り込んだモジュールが印象的です。空間の真ん中に柱を入れることは想像できませんでしたが、窓やドアのアーチをモチーフとして扱う空間的な提案もアリという盲点に気づかされました。
片山先生
ウェーブ状のライティングダクトを入れることで、均一な空間をブレイクする働きが生まれると思います。中心の柱も空間に寄り所ができるという意味で、我々の想定と違う使い方が起こると思います。
江尻先生
光のデザインの仕方が上手でした。中央の柱は天井のシステムを支える柱として、有効な構造をつくり得ると思います。棚に幕などがあれば二重で断熱効果が生まれますので、発展性を感じました。

審査結果の発表/審査員および受賞学生のコメント

金賞 「教室の横利用/木の家具/可動式パーテーション/模型棚」

  • 東先生

    空間を変えてくれそうな期待感を抱かせてくれましたし、実施性がある点を評価しました。純粋なアイデアコンペティションではなく、リニューアルを前提としたコンペティションの金賞に相応しい作品でした。

  • キャズ先生

    空間を横に使う発想が“目からうろこ”でした。パネルと棚もシンプルながら可変性があり、使い方を想像できる案でした。120名が集まれるという点でも高評価につながりました。

  • 片山先生

    パーティションのデザイン性が高かったです。上が開いていて光が入ってきますし、マグネットで掲示もできますので、全体的に完成度が高かったと思います。

  • 江尻先生

    パーティションを使う空間構成の事例は増えていて、有効性が見直されてきています。この内容を発展させれば、ほかのスペースでも応用できると思います。

Tさん

入学以来使ってきた樟渓館に対して感じていた課題を、「今あるものを生かしながらどう変えるか」という視点で提案しました。現実性を評価していただけたことが嬉しく、先生方からのご指摘も大きな学びになりました。卒業後は大学院でランドスケープを学び、「対人間」を意識したスケール感を大切に、さまざまな施設づくりに携わりたいと考えています。

銀賞 「多層の記憶 ~行為が空間を形成するスタジオの再定義~」

  • 東先生

    学生の願いを込めたメッセージ性の強さを感じましたし、これまでの考え方をガラッと変えるスタジオが頭に浮かびます。学生がスタジオをシェアしながら模型を作り込んでいったコーネル大学時代を思い出しました。

  • キャズ先生

    空間への思いが“幕の内弁当”のように詰まっていて、気概を感じる素晴らしいプレゼンでした。120名が入れる空間にもしてほしかったという点が、金賞との差が出た部分だと思います。

  • 片山先生

    学生がにぎやかにいきいきと活動する光景が目に浮かぶ提案でした。ものをつくる過程の痕跡が積み重ねられていくことをイメージできる提案だったと思います。

  • 江尻先生

    リアルに欲しいと思わせる空間づくりのアイデアを端的に提示してくれて、教員としても“何とかしていかなくてはならない”と思いました。

Wさん

アイデアを言葉から整理し、空間イメージを明確にしていく手法で今回の提案をまとめました。制作を通して、建築を「人や動物の視点」から捉える重要性をあらためて実感しています。卒業制作では集合住宅における保護猫のための空間をテーマに、引き続き研究を深めていきます。

総評

江尻先生

日常的に使っている樟渓館だからこそ、多くの具体的なアイデアが集まりました。5作品はいずれも優劣をつけがたい内容で、今後の改善策を検討する大きなヒントになりました。

片山先生

学生の高いデザイン力をあらためて感じました。既存の構造を生かしながら、現代の使い方に対応する提案が多く、将来、実際の改修に反映される可能性も十分にあると思います。

キャズ先生

学生が当事者意識を持って取り組んでくれたことが何より印象的でした。今後は実現に向けて、ワーキンググループや合同ゼミなども企画していきたいと考えています。

東先生

5作品はいずれも示唆に富み、現実的な改善案からデザイン性の高い提案まで、多くの刺激を受けました。機能だけでなく、学生が愛着を持ち、訪れることにワクワクできる空間づくりの重要性を再認識しました。これらのアイデアを今後のリニューアルに生かしていきます。

※コメントはWeb公開用に編集しています。

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