ルールを守らない人のせいにしていては、SDGsは達成できません。

(写真左より)高梨さん、丸山さん

入学式の運営から郵便物の管理まで。業務の幅広さは学内一かもしれません。

高梨さん
総務課の役割は、本学に当たり前にある安心安全を、当たり前に提供し続けることです。例えば警備員さんを配置してトラブルに備えたり、清掃業者さんを手配して学内を清潔に保ったりしています。その警備や清掃をする業者さんを選定し、やりとりをするのが私たちの業務の1つです。コスト削減を目的に、業者さんは何年かに1度再検討する決まりがあります。ただ、何年も広い学内を担当していただくと業務もスムーズですし、数年でより安価な業者さんが現れることも稀です。そのため私たちとしては、継続するほうが望ましいと思うこともあります。ただしコスト削減ももちろん大事。両方のバランスを考えながら決断することが大切なのです。
入学式や卒業式といった毎年の恒例行事も、総務課の担当です。式の運営だけでなく、生協さんと協力してレンタル袴の手配などにも携わります。私たちは普段、直接学生と接する機会が少ないので、こうした華やかなイベントで学生を間近に見ることができるのは、大きな喜びの1つです。
他の課と連携する業務もあります。近年では、数年前から学生支援課と連携し、通学時間帯の安全施策を実施しました。最寄り駅から本学までの歩道に学生があふれてしまい、通行の安全性が損なわれていると、地域住民の方からご指摘があったのです。そこで本学の学生をアルバイトで募り、広がらずに歩いてほしい旨を伝えるプラカードを持ち、通学路に立ってもらうようにしました。学内だけでなく通学路での安心安全、さらには地域住民の方との関係性の構築にも、私たちは貢献しています。
その他、PTAとの交流や意見調整、各種契約書類の確認、郵便物の管理など、業務は多岐に渡ります。どこに相談していいか迷うような内容の電話は総務課で受けることになっていることからも「困ったら総務課」という印象を持たれているように感じます。対応する幅の広さは自分たちでも驚くほどですが、反面頼られる分には嬉しいですから、尋ねて来る人の力にはできる限りのサポートをしたいと思いながら、日々業務にあたっています。

使用済みティッシュは生ゴミ?紙ゴミ?

丸山さん
現在私たちが力を入れているのが、ゴミの分別方法の周知です。本学では生ゴミ、紙ゴミ、燃えないゴミ、ペットボトル、缶、瓶の6つのゴミ箱を1セットにして、各所に設置してあります。学生や教職員は、普段は自分の居住地域の分別に従ってゴミを捨てており、地域によって分別ルールは異なります。そのため大学でもその認識のまま捨てられてしまうと、分別がうまくいかないのです。例えば現在の本学では、使用済みティッシュは「生ゴミ」です。知らなければ「紙ゴミ」に捨ててしまう人も多いのではないでしょうか。分別を間違えると業者さんの責任となってしまい、その業者さんを利用している他の大学や企業にまで迷惑をかけてしまうことになります。そのためゴミ箱にはなるべく細かく分別方法を記載したい……のですが、今度はそれを書きすぎでも読みづらくなり、むしろ読んでもえらいにくくなってしまうのです。何度か試行錯誤のうえ、現在はイラストも入れ、文字量もバランスを見て最小限としました。これにより分別の精度はかなり上がったと感じています。
粗大ゴミに関しては、また違った方向で力を入れています。粗大ゴミは、捨てる際にお金がかかってしまいます。そこで、金属類やパソコンなどの機械類は、なるべく引き取り業者さんに引き取ってもらうようにしているのです。コスト削減に加えて、金属やパソコンの基盤、レアメタルなどをリサイクルすれば、ゴミを資源化できるわけですから、一種のSDGs活動としても考えています。業者さんのなかには、引き取ったものを外国に出荷し、現地でリサイクルできる部品を取り出したり直したりする仕事をしてもらっているところもあると聞きました。微力ながら海外での雇用創出にも寄与できていれば嬉しいですね。

分別されるように工夫を凝らしたゴミ箱

災害時、本学は妊産婦さん専用の避難所になります。

高梨さん
防災関連業務も私たちの大切な仕事の1つです。定期的に実施する防災訓練の実施も、総務課が主導しています。災害の発生直後は、当然学内にいる学生や教職員をまず守らなければなりません。その際は、総務課が「防災本部」のような役割を担うことになっています。行政との連絡調整や、作業人員の配置などを取り仕切ることになります。幸いにして現在まで、災害時における総務課の活動実績はゼロではありますが、日々の安心安全を考える課としては、決して手を抜くことのできない仕事です。
巨大地震など大きな災害が発生した場合、大学は地域の方の避難所になることが一般的です。そんななか本学は、ただの避難所ではなく「妊産婦専用の避難所」として、管轄行政の文京区から指定されているのです。妊産婦の避難所生活は、体の無理がきかなかったり、定期的な授乳が必要だったり、他の方とかなり勝手が違い大変です。そこで妊産婦が必要なサポートを受けられる専用の避難所を設けることで、社会的弱者である彼女たちにも安心安全を与える役割を果たすのです。本学は女子大なので、女性のサポートにはうってつけです。どんな物資や設備が必要なのか、防災を専門に研究されている建築デザイン学科の平田先生に協力していただきながら考え、準備しています。

食堂の問題解決に、キッチンカーを活用!

高梨さん
2021年にキャンパス統合があり、目白キャンパスに通う学生の数が、以前までの約4,500人から6,500人程度にまで増えました。それに伴って発生した問題が、昼の食堂の混雑です。決して長いとは言えないお昼休みですから、多くの学生は手早く昼食を済ませたいと考えています。ところが、混雑すると食堂で行列に並ばなければならず、休み時間を圧迫してしまうのです。かと言って、食堂を急に拡張したり別途設けたりするのは簡単ではありません。この事態を受け、総務課として提示した解決策がキッチンカーの導入です。これにより昼食需要が分散し、食堂の混雑は大幅に解消できました。折を見てキッチンカーの内容も変更していますので、いろいろなフードメニューを楽しむことができ、学生には非常に好評のようです。ちなみに、最も人気があるのはケバブ屋さんで、他にも甘いクレープを昼食として食べる学生も多いと聞きました。このあたりは女子大ならではの傾向なのかもしれませんし、今後のキッチンカー選定の参考にしていきたいと思います。

丸山さん
キッチンカーの話は、学生から食堂の件の指摘があっただけでなく、PTAからも同じ声が出たため実施した経緯があります。PTAの集会は年に2回あり、そこに私たちも出席し、出た意見を集約してから大学側へ伝えるという役割も担っています。これまでにもPTAからの意見をもとに、サークルで使用している部屋をきれいにリフォームしたり、学園祭の支援をしたりしました。本学はPTA活動が活発で、いつも熱心に要望を伝えられます。いずれも学生のためを思った要望ですので、学生にとっては非常に心強い存在なのではないでしょうか。

当たり前の大切さを、忘れないでほしい。

丸山さん
本学の魅力の1つに、治安のよさがあると思います。教室の備品が盗まれてしまう大学もあると聞いたことがあり、本学ではそのような話は見聞きしたことがないので、少々驚きました。それに築年数の経った建物もきれいに管理されているので、その清潔感は外部の方にもよく褒められます。そのような環境があるからかどうかはわかりませんが、本学は素直で明るい学生が多いように感じますし、私はそんな学生たちが大好きです。私たちが直接学生にできることは少ないですが、例えば窓口では常に笑顔で対応するように心がけています。小さなことかもしれませんが、学生にはここで過ごす時間が少しでもよい思い出になってほしいですから、私としてはできることを精一杯するのみです。

高梨さん
治安の話で言えば、本学の警備員は女性の方も多いんです。普通警備となると、屈強な男性ばかりが目を光らせているイメージですよね。実際に男性のレスリングやラグビーなどのスポーツマンが多くいる大学では、何かあった際に彼らを抑えることができる警備員が多く配置されるそうです。本学はそうした屈強な警備員が少ないので、比較的和やかな雰囲気になっていると言えるかもしれません。女性警備員であれば女子トイレなども問題なく見回ることができますので、合理的な配置でもあるのです。
学生との関わりが少ない総務課ですが、近年は訪ねてくる学生が少しずつ増えてきた印象があります。「この授業の教室ってどこですか?」など特に難しくない対応がほとんどですが、気軽に話しかけられるということが、学生の安心感につながっているのであればそれは素直に嬉しく思います。もしかしたら大学内の「交番」のようなイメージが、総務課にぴったりなのかもしれません。学生や教職員の安心安全を守り、何かあれば窓口となり各所との調整もし、日々の生活を支えるのが私たちの役割ですから。
だからこそ、日々何もないことが一番だと考えています。少し前にはコロナ禍があり、当たり前が当たり前でなくなった日々がありました。卒業式などができなかった学生のショックは計り知れませんし、毎年その運営をしていた私たちも同様に心を痛めました。当たり前の大切さを、これからも忘れないために。少々大げさではありますが、総務課にはそんな使命があるような気がしてなりません。

主なSDGsへの取り組み

  • 11. 住み続けられるまちづくりを

    災害時に社会的弱者となる妊産婦。日本女子大学がその専用の避難所として機能するよう準備をすることで、多様な人々が住み続けられるよう貢献している。

  • 12. つくる責任、つかう責任

    学内のゴミの分別ルールを周知させることで、消費者が正しく廃棄することの大切さを教え、これにより廃棄のことも考えて製品を選ぶ消費者が増えることで、環境に配慮した製品作りの後押しもしている。

  • 13. 気候変動に具体的な対策を

    できる限り引き取り業者を活用して粗大ゴミを削減することで、本来粗大ゴミ廃棄にかかるはずだったエネルギーを抑制し、温室効果ガスの排出量削減に寄与している。

関連する取り組み

一覧はこちら