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国際文化学部 1期生が、キャンパスから
海外への越境体験に飛び出しました

2023年夏、国際文化学部に入学した1期生が、スタディ・アブロード・プログラム(SAP)で7つの行先に旅立ちました。

国際文化学部の特長であるSAPは、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、台湾、韓国、ベトナムの各都市で約2週間学ぶ、1年生必修の脱キャンパス型のプログラムです。

刻々と変化する国際情勢や感染症、酷暑などさまざまなリスクに注意を払いながら、「大学4年間の学びの基礎となるSAPを、なんとしても成功させたい」との先生方の想いが実を結び、全員が無事に第一希望の国での学修を実現させました。

スタディ・アブロード・プログラム体験レポート


越境し、開眼して、新たな学びのモチベーションを得たSAP
国際文化学部長 河本真理先生

河本真理(こうもと・まり)

日本女子大学国際文化学部国際文化学科教授。東京大学で美術史を学び、パリ第1大学で博士号(美術史)取得。専門は西洋近現代美術史。主要な著書に『切断の時代-20世紀におけるコラージュの美学と歴史』(ブリュッケ、2007年、サントリー学芸賞、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン ジャパン特別賞受賞)、『葛藤する形態-第一次世界大戦と美術』(人文書院、2011年)。共著に『現代の起点 第一次世界大戦 3 精神の変容』(岩波書店、2014年)、『ピカソと人類の美術』(三元社、2020年)、『戦争と文化-第二次世界大戦期のフランスをめぐる芸術の位相』(三元社、2022年)など多数。

7つの国で得た多彩な学びがありました

夏季休暇中に実施したスタディ・アブロード・プログラム(SAP)は、1年生全員が第一希望のプログラムへの参加を叶え、無事、帰国できたことに安堵しています。後期が始まった今は、SAPによって得た経験を振り返り、学びを深めているところです。

SAPの目的は、キャンパスを飛び出して、言語、文化、歴史、そしてその国の地域と「今」に直接触れることで、個々の専門分野への関心や問題意識を深めるとともに、理解・共感に必要な語学を実地で経験し、さらなる学びへの導入とすることにありましたが、今回の何よりも大きな学びは、各国で出会った多彩な人々との交流の中にありました。

たとえばアメリカのボストンでは、宿泊したホステルで、アメリカ人以外の人々とも交流する機会があり、さまざまな異文化に触れました。また、協定大学のマウント・ホリヨーク・カレッジとウェルズリー・カレッジではすでに秋の授業が始まっており、学生たちは一緒に授業を聴講させていただくことができました。日米の大学の授業スタイルの違いを実感し、アメリカの大学生が時には教師の話をさえぎっても質問するなど、積極的に授業へ参加する姿に刺激を受けたようです。

フランスのプログラムでは、南仏のヴァカンス客と一緒に食事をする機会があり、フランスでの夏の過ごし方や食文化を学ぶことができました。何よりも、必然的にフランス語を使わなければならない状況は、語学力のアップはもちろん、理解・共感に必要な語学のレベルを実感でき、今後の学びの導入にもつながったことでしょう。

アジアの国々でも、酷暑にもかかわらず積極的に学び、異文化に触れ、多彩な知識や知見を得ることができました。

帰国した学生たちに「海外に出てみて、改めて日本についてどう思ったか」と質問したところ、それぞれの国において日本との客観的な比較をしていました。日本のスタンダードが世界のスタンダードとは限らないことを感じ、越境して視点を変えると物事の良し悪しも違うことがあると視野が広がり、自分を見つめ直すきっかけにもなったようです。

1年生のうちに海外体験をする意義

SAPの最大の特徴は、1年生のうちに全員が海外に出て学ぶことです。従来の文化学科でも海外研修プログラムは実施していましたが、対象は2、3年生であり、希望者のみが参加していました。大学に入学してすぐに海外研修、というのは早いと思われるかもしれませんが、この先、国際文化学部でどのように学びたいのか考え、モチベーションを高めるきっかけにもしてほしいとの思いがありました。

1年生後期からは「世界と自己を知るための科目」という専門科目も始まります。たとえば私は西洋美術史を担当しますが、フランスやイギリスやアメリカなどで触れた文化を後期の授業で再確認し、学びを深めることができます。実際、帰国後の学生たちは視野を広げ、今後の探求テーマを見つけ、興味関心をさらに深めたいとの思いを強くしています。

2年生からは実践プログラムが始まります。もしも実践プログラムで「海外a」もしくは「海外b」のいずれかを選択すれば、少なくとも在学中に3回の海外体験をすることになります。「海外a」のプログラムは、希望すれば誰もが受けられる新学部独自の半期留学です。「海外b」のプログラムは協定大学・認定大学への1年間の留学ですが、留学先の単位を本学の授業科目に単位認定できる制度があります。また、国内で行う実践プログラムも10クラスを開講し、今度は知識と体験を行き来して「越境」し、自分なりの問いを発見し、多様な言語やメディアスキルを用いて発信する力を身につけます。

SAPは「越境」し、自分を見つけるプログラムです。私自身、留学という「越境」で得たものは、閉じていた目を開かれるような体験でした。SAPで学んだことを実践プログラムにつなげ、深めたり広げたりしながら、一人ひとりがさらなる「越境」をしてほしいと願っています。