今年の6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)」が成立し、機を同じくして本学も親しく情報交換をしている津田塾大学が2025年度からトランスジェンダー女性を受け入れる旨を公表したことは記憶に新しいところです。本学では長い検討期間を経て、2020年3月に2024年4月入学から出願資格を拡大することを決定していましたが、学生の皆さんは毎年4分の1が入れ替わるので、今回初めて知ったという学生や保護者の方もいらっしゃるかもしれません。そこで、ご存じの方にとってはまたか・・・という内容かもしれないのですが、大切なことなので経緯を含め改めてご説明したいと思います。
検討のきっかけは、2015年末に性同一性障害の診断を受けている児童の保護者の方からいただいた附属中学校の受験可否に関する問い合わせでした。そこから学園内の検討を開始し、附属校園では難しいという結論が出た後、2017年度からは大学に絞って検討を続けました。出願資格拡大を決めたのは2020年3月で、実施を4年後からとしたのは、①しっかりと準備を進めるとともに、②入学してくる学生の皆さんにも周知する期間が必要(具体的には募集要項等への記載)だと考えたからです。2018年夏に理事会下に設けられたダイバーシティ委員会では、2020年度から広報担当、理念担当、啓発担当、附属校園担当と4つにグループを分けて準備を進めてきました。特に啓発担当グループを中心に、2020年度から性の多様性に関する動画を作成し、学生、教職員に対して、提示をしております。この動画は今年度入学された通学課程1年次には新入生オリエンテーションで、通信教育課程学生には@SS で視聴いただいており、次年度も更新版を用意することになっています。
職員に対しては、単に話を聞いて知識として備えるだけではなく、ロールプレイなどを通して自身の気持ちにも向き合うような研修を行ってきました。昨年は全学園をあげた学園一貫教育研究集会で「SOGI(性的指向と性自認)の尊重を人権の観点から問い直す」をテーマに二部構成にて学びを深め、大きな成果を上げました。
今年の5月には、「すべての女性が共に学ぶためのガイドライン-トランスジェンダー学生(女性)を迎えるために-」を公表し、学生の皆さんにはJASMINE-Naviや@SSを通じてお知らせしています。このガイドラインは、各学科や委員会、事務部局から意見を収集し、弁護士によるリーガルチェックも受けており、今後も随時更新していく予定です。
本学ではこの課題を特定の少数者に対する対応というよりは、本学にはすでに、性的指向や性自認に限らず、文化も国籍も宗教も、また障害の有無も含めて、多様な人が共に存在していることに改めて気づき、暗黙の差別や排除が起こらない様に成長していけるきっかけととらえています。
現在、社会的にはトランスジェンダー女性に対する誤解に基づくバッシングの動向が見受けられますが、ひとつはっきり言えるのは、自分自身を大切にすると同時に、あいまいな情報に基づく人権侵害には加担しないという決意を持つことの重要性です。私たち一人一人が冷静にそれぞれの情報を見極め、真偽を確認し自分の頭で判断する、そして、さらに学び続ける姿勢を持ちたいと思います。
今後も「何が学生にとって最善であるか」を前提に、様々な検討を行い続けていくことになります。本学は常に対話に開かれた場でありたいと願っていますので、わからないことや懸念がある場合は遠慮なく委員会にお問い合わせください。
ダイバーシティ委員会:diversity@atlas.jwu.ac.jp
ダイバーシティ委員会委員長
人間社会学部教授 小山聡子