日本女子大学 篠原学長 告辞
本日ここに学位記を授与される皆さん、おめでとうございます。日本女子大学の教職員を代表して、心よりお祝いを申しあげます。そして、皆さんをこれまで支え、励ましてくださったご家族、関係する皆さまにもお祝いと、合わせて、感謝の意をお伝えいたします。
さて、社会全般を見渡しますと、長かった新型コロナウイルス感染症のために多くの犠牲を強いられた日々から、徐々に私たちは日常を取り戻しつつあります。多くの制約の中で、大学の授業で言えば、TeamsやZoomなどをつかった遠隔授業が常態化するなど、ITリテラシーの進展は、目覚ましいものがありました。それは、この試練の中で私たちが手にいれたものであり、新しい可能性が開かれた一面ととらえることができるでしょう。一方で、直接対面でコミュニケーションすること、集まることの大切さ、愛おしさを改めて実感するところでもありました。
皆さんはこの先、これまで以上に多くの出会いを経験することになるはずです。それは大いなる喜びでもありますが、多様な価値観に触れること、多様な属性の人々と共存することは簡単ではありません。私の専門である建築の設計においては、モダニズムはむしろ多様性を排除する指向をもっていました。団地は住むところとしてつくり、工場地域には工場、商業地域には商業といった具合です。現在の法律では、一つの建物の中に異種の用途が共存することには厳しいルールが伴います。その背景には、もちろん、過密になり、スラム化した都市を衛生的にし、景観を整え、合理的な集住環境をつくるという大命題があり、それには、大いに意味があったのは確かです。
文化人類学者のエドワード・ホールはその著作「かくれた次元」の中で、面白いことを言っています。都市のスラムクリアランスに対して触れた文章で、「ネズミの集団の密度を高めて、しかも健全な標本を維持するためには、ネズミを箱に入れてお互いに見えないようにし、かごを清潔し、十分な食事をあたえればよい。箱は望みのままに積み重ねることができる。残念なことにかごにいれた動物は愚鈍になりやすい。」この一説は、スラムクリアランスのために建設されたプライバシーの高い、高層で大規模な団地への批判でもあり、実際、そうした場所の多くは結局再スラム化しています。
適度な相互活動は人の創造性を刺激し、何よりそれは生きる意味を担保するものです。私が長年調査してきたバンコクのディンデン団地は、5階建ての建物が並ぶ集合住宅団地ですが、その1階はもともと、ピロティというオープンスペースとしてつくられていました。つまりそこは純粋な居住空間としてデザインされていたわけです。しかし、現在は、そこにはカフェや食堂など店舗や保育園や高齢者のデイケア施設で埋め尽くされて、中庭には小さな仏教のスピリットハウスも建てられていました。住人は自らの手で、均質な空間に相互活動の可能な空間をつくり、用途の多様性を獲得したのです。それは、単に空間が多様であるということにとどまりません。ある住人はそこで、食堂を運営し、保育施設を手伝い、スピリットハウスの周辺で行われる祭事の運営委員として働きます。彼は、この古い町のように複雑に住みこなされた団地の中で、自分の中に、多面的な自分を発見することになったわけで、それは彼の人生を豊かにしているように思えました。
多様な場所での多様な人との相互活動は、多くのコンフリクトを生み、さらにそれが多様な属性の人々との相互活動ともなれば、さらに多くの問題を孕むことは想像に難くありませんが、それ以上にその刺激は人を創造的に、自分の中の新たな側面を発展させる可能をもつでしょう。
自分の中の可能性を育てたいなら、未知の場所に行き、できるだけ自分とは異なった未知の人と出会ってください。創立者成瀬仁蔵は若くして出会った澤山保羅によってキリスト教に目覚め、遥かなるアメリカに渡り、女子教育の向かうべき姿を見いだしました。また成瀬の支援者であった広岡浅子や渋沢栄一は、成瀬に会わなければ、そこまで女子教育に傾注し、その支援者となることもなかったでしょう。誰かに出会い、相互活動を行うことで、それぞれが新たな自分を発見してきたという証左がここにもあります。
最後に、日本女子大学を卒業、修了する皆さんは、それに値する学問を修め、研究を成し遂げたことに誇りをもち、同時にそれが成し遂げられた環境に感謝することを忘れずに、新たな一歩を踏み出してください。あなたたちがここで、学び、考え、感じたことを、より広い世界で実現してください。女性を取り巻く社会情勢はまだまだ厳しく、あなたたちが人として、女性としてしなければならないことは、少なくありません。現実を直視する勇気を持ち、何事にも誠実に相対する皆さんのひとり、ひとりが、これからの日本、そして世界に新たな価値を創造していく存在であることを信じています。日本女子大学が誇る卒業生として、皆さんの輝く未来を心から祈念いたしまして、本日の告辞といたします。
日本女子大学泉会 岩脇彰信会長 祝辞
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
皆さんは、大学生活の大半をコロナ禍のもとで過ごされました。入学してからの1年間と2年目からとでは、その環境は激変し、大学に登校することができないことで、新たに友人を作ることができず、そのために心の不安を抱えられた方も多かったのではないかと思います。
困難な時期を乗り越え、本日、卒業式を迎えられましたことは、皆さんそしてご父母の方々にとりまして、喜びもひとしおのことと存じます。
これから皆さんは、就職、進学と新たなる環境に入っていくわけでございますが、そこには、大いなる未来が待っております。進学する方も社会人となる方も、新しい世界では、多くの人との出会いと共に、多様な価値観に接することになりましょう。新しい出会いは、自己の視野を広げ、可能性を広げるチャンスであります。しかしその一方で、周りの価値観と自分の価値観の違いに大きな違和感を覚えるかもしれません。困難な場面に遭遇した時は、どうぞ自分の視野が広がると思って、まずは気持ちを軽くして、俯瞰することをお奨め致します。
しっかりと自分の考えを持って、自分の意見を基にして、周りの人と協調していってもらいたいと思います。健康には気をつけて、なお一層ご活躍されることを祈念しております。
一般社団法人 日本女子大学教育文化振興桜楓会 高野晴代理事長 祝辞
ご卒業、ご修了おめでとうございます。コロナ禍にあっても大学生活を意義あるものになさり、本日卒業、修了を迎えられましたことは、皆さんの日々のたゆまぬ努力の成果と存じます。
本日皆さんをお迎えする卒業生組織である桜楓会は、第1回の卒業式の次の日に、創立者成瀬校長の強い期待のもとに発足しました。それは、卒業しても学び続け、社会貢献を行うことでした。その志は120年の時を経ても受け継がれ、常に学び、様々な活動を続け、後輩のために母校を支えています。卒業生は、現在93,000名を数え、海外を含め、145の支部を擁しています。
ご卒業後、職場で、大学院でいろいろな方との出会いが待っていると思います。同窓の方との出会いもあり、頼もしさを感じることでしょう。この卒業生同士のネットワークを駆使して、各分野で活躍してください。
桜楓会では、先日今年の卒業生と昨年の卒業生とのオンラインでの意見交換会を行いました。同じ学科、同じ職種ではないメンバーとの話し合いは、桜楓会ならではの企画としてよかったとの感想があり、続けたいと思っています。
桜楓会は様々な企画を立て、発信していきます。ご参加をお待ちしています。ぜひ本年10月7日(土)のホームカミングデーにお出かけください。皆さんのさらなるご発展をお祈りして、お祝いの言葉といたします。
第120回 新制73回 卒業生代表 人間社会学部文化学科 平原里菜 答辞
桜の蕾も膨らみ始め、春の息吹を感じられる季節となりました。
本日は、私たち卒業生のためにこのような晴れやかな式典を挙行していただき、誠にありがとうございます。ご臨席を賜りましたご来賓の皆様、先生方、保護者の皆様に卒業生一同、心より感謝申し上げます。
日本女子大学で過ごした時間は、瞬く間に過ぎていきました。4年前の春、不安と期待が入り混じる中、緑豊かな西生田キャンパスの門を潜ったことを今でも覚えています。個性溢れる仲間たちに囲まれ、得た学びや経験を通じて、自分らしく生きるための勇気や自信をつけることができた贅沢な4年間でした。
文化学科では美術や文学、音楽や思想など複数の専門領域を学び、多様な文化に触れました。授業を受ける度に新たな発見があり、興味の幅が広がっていくことを実感する毎日でした。中でも私は視覚的に表現されたものに関心をもち、その歴史や社会との関わり合いを考察することに励みました。作品の描かれ方や作者について学び文化的背景を探る中で、美術作品には当時の眼差しが反映され、社会と密接につながっているのだと気づかされました。また卒業研究では、音楽教育への貢献で知られる伊澤修二が行った社会事業について取り上げ、その画期的な意義と時代的な限界について論じました。私はこれらの学びを通じ、従来の常識にとらわれることなく、世の中や自分自身と常に向き合っていくことの重要性を実感しました。文化学科で培った他者への想像力や多角的に物事を捉える力は、この先の人生の糧になると確信しています。
私たちの大学生活は2年次から新型コロナウイルスの影響で大きく変化しました。私が所属した音楽サークルでは対面での練習や演奏会が制限されてしまいました。新入部員の加入も途絶え、サークル存続の危機に陥りました。そのような状況であっても部員と何度も話し合い、オンラインでの練習を続け演奏動画の配信を成功させました。逆境に立ち向かう過程で、諦めないことの大切さや仲間との連携の必要性を学びました。
対面授業もなくなり、教室で先生や友人とともに学ぶという当たり前が失われました。前例のない日々であっても教職員の皆様が学生同士のつながりを絶やさないよう工夫してくださったことで、孤独感や不安が和らぎました。受け身になりやすいオンライン授業では、常に疑問を持って自主的に学ぶよう努めました。状況に応じて柔軟に対応し、コロナ禍を乗り越え支え合ってきたことは私たちを強くしてくれたはずです。
私たちは今日、この日本女子大学を卒業し、それぞれが選択した道を進んでいきます。どのような道であったとしても、本学で過ごした日々や磨いた知性と感性、志は決して消えません。未解決の問題が山積する不確かな時代の中で、私たちは一人ひとりが託された使命を精一杯果たしてまいります。本学の三綱領「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」の理念を胸に刻み、各分野でより一層の努力をしていくことを誓います。
最後になりましたが未熟な私たちをいつも熱心にご指導くださいました先生方、多岐にわたって学生生活をご支援いただいた職員の皆様、一番近くで励まし寄り添ってくれた家族、苦楽を共にした友人たち、これまで支えてくださった全ての方々に、心より御礼申し上げます。皆様のご健康と日本女子大学の輝かしい発展を祈念し、答辞とさせていただきます。
第120回 新制73回 卒業生代表 理学部化学生命科学科 橋本真由 答辞
やわらかな陽が降り注ぎ、桜が咲き始める季節となりました。
本日は、私達卒業生のためにこのような式典を催していただき、誠にありがとうございます。
ご多忙のなか、ご臨席賜りました先生方、ご来賓の皆様、保護者の皆様に、卒業生一同、心より御礼申し上げます。
4年間の大学生活ははじめて経験することばかりで、忙しくも充実したものでした。
1年生のときは毎週実験のレポート提出に追われ目まぐるしく日々が過ぎていったことや、はじめてのアルバイトでお金をもらえることに感動したこと、部活の練習に熱心に励んでいたことが鮮やかに思い出せます。
2年生から始まった専門科目の授業は、内容が難しい上に情報量が多く理解するのに苦戦しました。そうした中でも自分なりに理解して専門的な知識を積み重ねることで、以前はうわべしか知らなかった物事を深く理解できるようになりました。近年よく耳にするワクチンやPCR検査などの原理を人に説明できたとき、知識が増え以前よりも視野が広がったことを実感し喜びを感じました。
実験も座学と同様難しくなり、データをまとめるのに苦労したり結果からどう考察すればよいのかわからず苦しんだりしたこともありました。それでも根気強く考察に取り組む中で、客観的なデータの示し方や論理的な考え方を学びました。
4年生になって卒業研究が始まるとそれまでとは大きく異なる種類の大変さに直面しました。自分でやるべき実験を考え、スケジュールを調整し、遂行することが必要になったからです。さらに、機器を使った細かい作業に苦戦したり、期待していた結果が出ずに辛かったことも多くありました。それでも試行錯誤を繰り返して研究を進め、最終的に論文を完成させたときには、やり遂げたという達成感をしみじみと感じることができました。
私たちはこのように多くの苦難を乗り超えて今日この日を迎えることができました。直面した困難は人それぞれでも、それぞれがあきらめずに乗り越えてきました。そして4年間、粘り強く考え抜く力や、得た情報から様々な可能性を検討し問題を解決する力を養ってきました。これからまた困難があっても、この4年間を思い出せばめげずに乗り越えられるはずです。今後はその力を活かし、社会の一員として自分の役目を果たしていきたいと思います。
最後になりますが、私たちが新型コロナウイルス感染症の流行による異例の状況の中でも、社会で生きる基礎となる力を十分に養えたのは、例年通り多くの学びを得られるようご尽力くださった先生方、学ぶ環境を整えてくださった職員の皆様のおかげです。また私たちがここまで頑張れたのは、温かく見守り、支えてくれた家族がいたからです。私たちを支え、導いてくださった全ての方に、心より感謝申し上げます。
日本女子大学のさらなる発展と、皆様のご健康をお祈り申し上げ、答辞とさせて頂きます。
《附属高等学校》
穏やかな日差しに桜の花も開き始めた3月15日(水)、高等学校にて、第75回卒業式が行われました。今年度は、保護者の皆様のご列席、卒業生による校歌や学生歌の歌唱、一部在校生による祝歌、在校生の係による受付や席詰など、従前の卒業式に近い形で催すことができました。
《附属中学校》
3月18日(土)、中学校の卒業式を行いました。今年の卒業生は入学式をオンラインで行った学年です。制約も多い中、最後の1年間は最上級生として様々な工夫をし、学校を引っ張ってくれました。
《附属豊明小学校》
桜の花がほころび始めた3月17日(金)、日本女子大学附属豊明小学校の第112回卒業式が執り行われました。式場は明治39年、豊明小学校の開校と同時に建てられた成瀬記念講堂です。
《附属豊明幼稚園》
2023年3月16日(木)春を感じる暖かな今日、第115回修了式を行いました。園長先生より一人ひとり修了証を受け取る子どもたちの表情は凛々しく、時折笑顔がこぼれていました。