『自分の興味に突き進んで』
(神戸学院大学 現代社会学部 現代社会学科 講師・現代社会学科2007年卒)
街路樹の紅葉が艶やかになった11月中旬、オンラインで本学と神戸学院大学を繋ぎました。今回お話を伺ったのは、神戸学院大学 現代社会学部で講師をされている梅川由紀さん。学生時代から続けている研究テーマのお話を中心に大学教員のやりがい、一度企業に就職された経験など、幅広くインタビューをさせていただきました。
街路樹の紅葉が艶やかになった11月中旬、オンラインで本学と神戸学院大学を繋ぎました。今回お話を伺ったのは、神戸学院大学 現代社会学部で講師をされている梅川由紀さん。学生時代から続けている研究テーマのお話を中心に大学教員のやりがい、一度企業に就職された経験など、幅広くインタビューをさせていただきました。
日本女子大学附属豊明小学校から本学で学び、2007年に人間社会学部 現代社会学科を卒業。2011年に筑波大学大学院 人文社会科学研究科 社会科学専攻 一貫制博士課程退学(修士号取得)。デロイト トーマツ コンサルティング株式会社(現デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)のコンサルタント職に就職され、その後2020年に大阪大学大学院 人間科学研究科 人間科学専攻 博士後期課程を修了。現在は神戸学院大学 現代社会学部 現代社会学科で講師として「ごみ」や「モノ」について研究されている。
私は小学校から大学まで日本女子大学だったので、受験もなくのびのびとした学生時代を過ごしてきました。現在の研究テーマと出会ったのは、高校2年生のときに所属していた自治会総務で、清掃キャンペーンを考えたことがきっかけです。当時は、ごみ問題に対する知識が乏しかったため、活動はうまくいかず、すごく反省しました。その活動を通して、とくに学校にあるペットボトルごみとその回収工程に興味を持ち、リサイクル工場に見学に行きました。私が初めて出会った複雑で一筋縄では解決できない社会問題が、ごみ問題でした。
中学、高校ではレポート課題を与えられることが多く、レポート課題を通じて自分の関心事を深めていけたことは今でも役に立っています。先に述べたリサイクル工場の見学もそうですが、何事も先生方が応援し、後押してくださったことが、今に繋がっていると感じています。
大学では、ごみに関わる勉強をしたいと考えて人間社会学部 現代社会学科に進学しました。学生時代はゼミでの活動がとくに印象に残っています。所属していた尾中文哉先生のゼミは、雰囲気が良く楽しかったですし、それぞれの学生に対して、先生はきめ細やかに対応してくださりました。
中でも思い出深いのは、ゼミの最初に出た社会学者について調べる課題です。私にはジンメルという社会学者が割り当てられたのですが、当時は「自分の関心のあるごみ問題と全く関係がない」と疑問に思っていました。先生と同じ教員となり、あの時から15年を経て、ようやく私にジンメルを調べさせた意味が分かり、嬉しくなって先生に連絡を取りました。大学3年生の拙い言葉でも真剣に話を聞いてくださり、将来の役にも立つような社会学者を紹介してくれたことに感謝しています。
ゼミ以外で印象に残っているのは、「ジェンダー論」の授業です。すごく難しかったのですが、自分が授業を受け持つようになり学生時代のノートを見返すと、大学生のレベルとは思えないほどのハイレベルな内容でした。教えてくださった先生の熱量を今改めて感じます。
「環境社会学」の授業風景。分かりやすいようにパワーポイント・ビデオ・写真などを活用しながら授業を行う
社会学でごみのことを突き詰めるために、卒業後は筑波大学の一貫制博士課程へ進学しました。もちろんその後は研究者になることを目指していたのですが、ごみという社会問題を扱うにもかかわらず、社会に一度も出ることなく研究者になってしまっていいのだろうかと、とても悩みました。社会学者の視点からではなく、ごみの排出者である企業では、どのようにごみを見ているのかを自分で確かめたいと思ったのです。
そこで、博士後期課程に進む前にデロイト トーマツ コンサルティングに就職しました。環境とは関係のない仕事をあえて選んだ理由は、コンサルタント職であればいろいろな企業を見ることができたからです。一企業の中に入るのではなくて、第三者的な立場から複数の企業を客観的に見ることで、企業のごみの現状を知ることができました。デロイト トーマツ コンサルティングには約3年在籍し、その後は大阪大学大学院の博士後期課程に進み、現在も研究者としての道を歩んでいます。
学生から「講義が面白い」と言われるときに大学教員としてのやりがいを感じ、嬉しいです。大学教員は教育者でもあり、研究者でもあります。そのどちらの立場でも一番大事なのは自分の研究テーマに対しての「楽しさ」を伝えることだと思っています。
講義の中で学生が興味を持ってくれれば、あとは学生自身で動いてくれるので、担当する科目の面白さのポイントを伝えることが教育者として重要です。その手段の一つとして自分の体験や経験を交えて話をするようにしています。たとえば英書講読の授業では、訪れたことのあるイギリスのネス湖の文献を扱い、写真も見せつつ実体験を交えて講義をしました。
研究者の立場では、社会学的に新しいことが言えるというのは大前提ですが、そのうえで社会から関心を持ってもらえることが、その分野の発展にとって必要なことだと考えています。
社会調査を行う「社会調査士実習」での一コマ。学生の目線に寄り添った指導を行うことを意識されているそう
女子大の強みは、女性も前に出ていけるし、それぞれの適材適所で協力しながら動くことができる点だと思います。日本女子大学では、ライフサイクルについてなど、卒業してからも相談できる友人が多くできました。同級生たちには今でも助けられています。
学生時代にしか得られない体験というのは、必ずあります。時間があるから「何でもやる」というよりは、「今しかできない体験」をすべきだと思います。私も学生時代は、NGOやボランティアに参加したり、1人で海外旅行にもたくさん行きました。自分の目で見て、体験した経験は、思わぬところで役立つことも多いです。学生が見えている仕事の側面はほんの一部なのに、「将来には関係ないから」と好きなことをやめてしまうのはもったいないです。結局は今の積み重ねが将来を形作りますし、何がどのように結びつくかはわからないので、好きなことや興味のあることは、やり続けるべきだと思います。
梅川さんの穏やかなお人柄で自然と緊張がほぐれ、和やかな雰囲気でお話を伺うことができました。自分の中で一貫した研究テーマを持ち、高校時代から自分らしく向き合っている梅川さんから、私自身が大学生としてどのように学業に向き合うべきかを学べました。ただ授業を受けるだけではなく、テーマの中で関心を持てるところを探すという姿勢を大事に今後の学修に取り組みたいです。学生時代からさまざまな活動に関心を持って取り組まれていたからこそ、惹きつけられるお話が多く、実りある時間でした。
(JWU PR アンバサダー/人間社会学部 現代社会学科2年 浅見舞桜)