女性が生涯をかけて社会と関わること。これは日本女子大学創立以来、大切にしてきたことです。
本学の地域貢献は、大正時代の関東大震災時に本学学生と、卒業生、当時の東京市社会局とが協働して開設した「桜楓会児童救護所」における救護活動から始まりました。地域と結びついた社会連携は脈々と引き継がれ、2006年には目白キャンパスのある文京区と本学とは「相互協力に関する協定」を結び、さらに2012年には「災害時における母子救護所の提供に関する協定」を締結しました。
本学が積み上げてきた地域連携・社会貢献の特色を活かしながら、社会連携教育を全学的に推進し、社会に発信する機関として、2020年に社会連携教育センターが設置されました。
社会連携教育センターは本学と地域社会や産業界とをつなぐハブの役割を担う組織です。
センターの活動は大きく二つあります。一つは、大学の資源、教員の技術や研究成果などを活用して、地域社会や産業界に貢献する活動、もう一つは地域社会や産業界の資源などをお借りしながら実践的な大学教育を行う活動です。
一つ目の社会・地域貢献活動には、「JWU子育てサイエンス・ラボ」や、地域の方々の育児や家庭の悩み相談を行う「心理相談室」などがあります。本学には、児童教育や子育てを研究のキーワードとする先生方が多くいらっしゃいます。先生方は学部や学科を横断して地域貢献に関わる活動を行っています。地域社会に対して大学の資源を還元するのはそう簡単ではありませんが、象牙の塔に篭るだけではなく、地域の方と自由に交流し、地域に貢献することで自らの研究の発展にもつなげるというのが本学の伝統的な考え方です。
二つ目の実践的な大学教育に関する活動には、今年8月に北海道日高管内7町・日高町村会・日高振興局のご支援で実施した課題解決型授業があります。この授業では、日高地方の地域課題を学生達と地域の方々とが一緒に考え、その解決に取り組みました。
社会連携教育を重視する本学では、「JWU社会連携科目」を設定しており、文化、地域、多様性、防災、福祉、環境などのテーマについて、SDGsとも関連付けながら実践的な教育を行っています。地域と連携して行う多様な学びは、たとえばフードロス問題であれば食物学科や家政経済学科、住まいの問題であれば住居学科、地域活性化のための観光であれば、来年度新設される国際文化学部など、様々な学部、学科の参加が可能です。
今後も、産業界や地域社会の方々から「課題を解決するために力を貸してもらえないか」という問い合わせがある場合に、社会連携教育センターは大学・学生と産業界や地域社会の方々とを積極的につなげていきたいと考えています。もちろん、学生が自主的に企業や地域と連携して、商品開発を行うことがあってもいいでしょう。産業界や地域社会と連携して行う活動は、将来的に社会の課題を解決できる人材を育成する大切な教育活動の一つです。学生の皆さんには、大学在学中に積極的に社会貢献活動を経験してほしいと思います。
横井孝志先生 【プロフィール】家政学部 被服学科教授。研究テーマは被服科学、生体力学、人間工学、ユニバーサルデザインなど。人間工学や感性工学の方法を用いて人の姿勢・動作、感覚・知覚などの人間特性を計測し、被服の設計や評価に応用する研究を行っている。