レインボープロジェクト“シンフォニー”によるパレットトークの様子(2021年11月)
2020年の6月、2024年4月入学者からのトランスジェンダー学生(女性)受け入れを公表して3年目が順調に進んでいます。昨年、本ニュースで経過のご報告をして以降の主な動きと私たちの姿勢をお伝えしたいと思います。
本年6月に本学がダイバーシティ宣言「『多様な女性』が共に学びエンパワーしあう女子大学を目指して」を発表したことは記憶に新しいかと存じます。昨今SDGsへの取り組みの後押しもあって、ダイバーシティ宣言は多くの大学で発表されているのですが、私たちは本学ならではの違いにこだわりました。すなわち、トランスジェンダー女性と共に学ぶ決定をしたことをまず前面に出し、このことを契機に学内に既に含まれうる多様なSOGI(性的指向や性自認)を生きる人々の存在を認識すると同時に、その他の様々な属性(障害の有無、国籍や文化、宗教、信条、年齢等)に改めて目を向けることの重要性を強調するという説明になっています。さらに、こうした多様な属性の間で生じうる諸種の摩擦も一つ一つ乗り越える工夫を重ねるという決意表明をいたしました。
このように、トランスジェンダー女性と共に学ぶ大学を目指した準備とは、特定の少数者に向けた何かというよりは、本学がよりインクルーシブな(多様な存在を包摂した)組織になっていくための協働作業を活性化させてくれる契機ととらえています。今年は、夏の間を中心にマスコミ各社からの取材に応答し、また関西の武庫川女子大学の研究者の聞き取りにも対応するなど、対外的にこうした私たちの考え方や姿勢を表明する機会が多くありました。
学内では昨年に引き続き、ジェンダー専門カウンセラーのリードの下、「内なるバイアス」に気づくための職員研修にて事例検討やロールプレイを実施し、熱心な参加を得ております。これは知識を頭に入れることから一歩進んで、各自の体感や感情に向き合って内省する機会となり、誰もが誤解や間違いをする可能性もある存在として、共に学び続ける姿勢を醸成してくれるものでした。また、毎年実施している附属校園と大学の専任教職員による学園一貫教育研究集会は、今年度は「性的指向と性自認(SOGI)の尊重を人権の観点から問い直す」をテーマとし、第一部と第二部に分けて実施しています。第一部は9月にトランスジェンダー女性の方の語り及び本件に関して先行しているお茶の水女子大学石丸准教授の講義の動画を視聴願い、各自の今後に向けた行動表明と動画へのリアクションを寄せてもらいました。そこで寄せられたコメントを拝見しながら12月の第二部では理事長及び委員会責任者が対話的に応答する予定です。
また、学生主体の活動も少しずつ進展しています。昨年立ち上がったレインボープロジェクト❝シンフォニー❞は、性の多様性をめぐる在学生の知識や意識のアンケートを実施し、12月には勉強会としてパレットトーク「トランスジェンダーって??」を開催することになっています。
さて、2023年の5月には、出願の方法などを定めた「すべての女性が共に学ぶためのガイドライン」を学外に公表しなければなりません。そこにむけて、学内の意見収集の後、去る10月に本学のジェンダー専門カウンセラー及び学外の当該領域に詳しい弁護士に確認チェックを願いました。それを踏まえて11月10日に学園内全教職員を対象とする説明会を開催したところです。
本ガイドラインの策定方針としては、よりインクルーシブな組織を目指す本学にとって、すべての在学生及び卒業生に資するという原則を重視しています。さらに当該個人の方をめぐる厳格な情報管理をすると同時に、ご本人が希望する場合には必要範囲を限定した情報共有により適切な配慮ができること、そして周囲の学生や教職員に諸種の懸念や心配が生じないようはからう、というそれぞれを重視してまいりました。
このように、よりインクルーシブで、安全安心な大学を目指して日々努力を続けております。この件をめぐるご意見やご質問は以下のアドレスまでお寄せください。
ダイバーシティ委員会:diversity@atlas.jwu.ac.jp
ダイバーシティ委員会
委員長 小山聡子