--国際文化学部国際文化学科の前身である人間社会学部文化学科ではどのような学びがありましたか?
私の専門は西洋美術史ですが、文化学科ではそれに加えて日本美術史、映画・ダンス・音楽・ファッション・思想など、幅広い分野をカバーしていました。
語学も、英語、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語などから、英語を含めた2つ以上の言語を学んでいました。
国際文化学部では、こうした文化学科の多様な学びをベースにしながら、実践型プログラムを通して「国際力」「実践力」「発信力」をパワーアップします。
--河本先生の動画メッセージでは「国境やジェンダー格差といった境界を超えようとする越境力」に触れられていますが、先生のご活躍する分野でジェンダー格差を感じることはありますか?
大学院生や美術館の学芸員の女性は増えてきましたが、大学教員となると男性が多いです。特に役職に就くのは、いまだに多数が男性です。このようなジェンダー格差も超えてリーダーシップを発揮し、広い世界で活躍する人材を育てたいですね。
--国際文化学部のキーワードは「越境力」ですが、河本先生ご自身が「越境」して、パリ第1大学で博士号を取得されています。なぜパリ大学を選ばれたのか、そしてその越境体験はどのようなものだったのでしょうか。
私自身、パリに長く留学していましたが、パリ第1大学に留学したのは、西洋近現代美術史、特にコラージュを本格的に研究するためでした。日本の大学院にいた頃、私はまだ井の中の蛙で、研究もやや行き詰っていたのですが、留学して目の前が開けたようになり、博士論文を書き上げることができたのです。ポンピドゥー・センターのカンディンスキー図書館でインターンをしたり、ルーヴル美術館で翻訳や通訳をしたことも、とてもよい経験になりました。こうしてまさに「自分の殻を破る」ことができたわけで、この「越境」体験がなかったら、今の私はないといえます。
--河本先生は最近、藝術学関連学会連合第16回公開シンポジウム「疾病と芸術」ではパネリストを務められましたが、このテーマは異なる学問分野を「越境」しているように見えます。
大変アクチュアルなテーマについて、美学・美術史・音楽学・舞踊学の分野から研究者が集まり、シンポジウムを行いました。私は、1918-20年にかけて大流行したスペイン・インフルエンザ(通称、スペイン風邪)が、20世紀美術にどのような影響を与えたのかについて考察しました。実はスペイン・インフルエンザは、長らく「忘れられた」パンデミックだったのですが、コロナ禍によって逆に着目されるようになったのです。
今まさに世界に蔓延する新型コロナウイルス感染症は、社会の仕組みや私たちの日常に大きな変容を迫りましたが、そこで芸術はどのような役割を果たすのか。芸術は、コロナ禍の時代にいかに「越境」し、人々の精神活動を豊かにできるのか。そんなテーマを研究するのも興味深いと思います。
国際文化学部には、さまざまな学問分野・領域を超えて学びたい、好奇心旺盛な学生に来ていただきたいですね。