4月22日(金)。汗ばむほどの晴天の下、本学学生と附属校の生徒たちがニュージーランド大使館を訪れました。各校の校長先生に引率されてきた高等学校・中学校の生徒たちは、この日のために考えてきたメッセージを述べて、首相へプレゼントをお渡ししました。大学生7人のほとんどはニュージーランドでの研修を経験した学生たちです。
4月22日(金)。汗ばむほどの晴天の下、本学学生と附属校の生徒たちがニュージーランド大使館を訪れました。各校の校長先生に引率されてきた高等学校・中学校の生徒たちは、この日のために考えてきたメッセージを述べて、首相へプレゼントをお渡ししました。大学生7人のほとんどはニュージーランドでの研修を経験した学生たちです。
この日、エデュケーション・ニュージーランドとの間で調印された「教育協力に関する協定」は、日本女子大学の国際教育にとって大きな意味を持っています。
本学は国際社会で活躍する女性人材を育成するため、海外への短期・長期留学や教育研修など、さまざまな国際的な学びの環境を整えてきました。一貫教育においても国際理解教育は重要です。
ニュージーランドは教育水準が高く、英語・手話・先住民マオリ語が公用語であり、ダイバーシティを推進しています。本学では1992年以降、高等学校の生徒が語学を、また大学の学生は幼児教育を学ぶために、ニュージーランドを訪れていました。このたび締結した協定は、コロナ禍で制限されていた国際交流を推進し、学生・生徒たちのグローバルな学びをさらに深めるものになると期待されています。
調印式にはジャシンダ・アーダーン・ニュージーランド首相、エデュケーション・ニュージーランドのチーフ・エグゼクティブ グラント・マクファーソン氏、同駐日代表 北岡美佐子氏が、本学からは今市涼子理事長と篠原聡子学長が参列し、式典終了後には教員、学生・生徒たちと大使館の方々との親睦会が開かれました。
調印式ではアーダーン首相ご自身が、日本からの留学生を受け入れた経験を語り、人と人とのつながりこそ大切とスピーチされました。
「今日の調印式には、32年前に我が家にホームステイしていた方が来てくださっています。当時私はたったの9歳でしたが、日本文化に触れた経験はその後の人生に強いインパクトを与えてくれました。彼女が残していった折り紙と金平糖はとても大切なものでしたし、『アーダーンさんのお父さんはトム・クルーズに似ているね』と言ってくれたことを、父は今でも話します。
2013年以来、200人のニュージーランドの若者が、ニュージーランド首相が支援する、海外留学奨学金制度を利用して、日本で勉強する機会を得ています。私自身も大学在学中に留学をしました。日本女子大学とエデュケーション・ニュージーランドという二つの教育機関が結びつくことで、学生だけではなく研究者の方々とも交流が盛んになることでしょう。そして二つの国の人と人とのつながりは、今後の国際交流に生きていくと思います。
日本女子大学はすでにニュージーランドと緊密な関係を築いています。私の母校であるワイカト大学では、幼児教育のプログラムに参加したと聞いています。
日本女子大学との協力協定は、ニュージーランド女性のリーダーシップを確立する意味でも非常に価値があります。我々はもっと多くの女性のリーダーシップを必要としています。今後さらにジェンダー平等を促進し、日本女子大学ともその価値観を共有したいと思います。それによって社会、経済の発展や福祉の向上が望めるはずです。
ニュージーランドには、日本の『おもてなし』と同じ意味の先住民マオリ語として『マナアキタンガ』があります。これは心を広くもって人をケアする、お世話をするという意味で、ニュージーランドの国際教育の根本となる精神です。ニュージーランドを選んでくれた日本の留学生に感謝して、心を込めてお世話をしたいと思います」。
アーダーン首相のスピーチに続き、本学、今市涼子理事長が「ニュージーランドの女性リーダーでいらっしゃる、アーダーン首相お立ち会いのもとに調印式を行うことができましたことを、非常に光栄に思います」と感謝の辞を述べました。
続いてエデュケーション・ニュージーランドのチーフ・エグゼクティブであるグラント・マクファーソン氏がスピーチを行い、「教育を通じて未来を切り拓いていく女性を応援するために、日本女子大学は信頼できる最高のパートナーであると確信しています」と述べられました。
スピーチの中でも「ニュージーランドではアーダーン首相に加え、最高裁判所長官、総督も女性です。ニュージーランド政府の議員のうち40%が女性です。昨年は公共部門の役員や委員会における女性の割合が50%に到達しました」と語られ、女性リーダーの進出を示す数字には、参列した大学生が特に強いインパクトを感じていました。
「これは女性が首相であるニュージーランドだから、ではなくて、日本の女性も刺激を受けて頑張らなければならないし、変わっていかなければならないと実感しました。今日の調印式は、ジェンダー平等や女性のリーダーシップについて考える良い機会でした」(家政学部 児童学科4年生)。
調印式が終わると、大使館の庭で親睦会が行われました。附属の高校生、中学生たちには、「アーダーン首相にプレゼントを渡して、英語で会話する」という大役がありました。
中学生からは、附属豊明小学校の児童が作成した「5つの訓」カードと中学校セーラー服のキーホルダーに手作りカード、高校生からはJWU Waveのグラフィックモチーフがデザインされたスカーフと附属豊明幼稚園の園児が絵柄を描いたスカーフをお渡ししました。
今回参加した7人の大学生の中には附属高校生のときに語学研修を経験した学生のほかに、2019年にニュージーランド幼児教育研修に参加した学生もおり、首相が卒業されたワイカト大学で学んでいたため、協定調印式の感激はひとしおでした。
大学生からはアーダーン首相に、ニュージーランドでお留守番をしている小さなお嬢さんへのお土産として、日本の伝統工芸品の曲げわっぱに入った積木の玩具をお渡ししました。
ニュージーランドは「テファリキ」という幼児教育が有名です。2019年に幼児教育研修としてニュージーランドを訪れたときは、アーダーン首相の母校であるワイカト大学でレクチャーを受け、大学内の保育所も見学させていただきました。他に現地の小学校や先住民マオリの子どもたちがマオリ語で生活している「Te Kohanga Reo」という乳幼児教育機関も見学できました。
近い将来、人間に変わってAIが多くの仕事をすると言われる中で、子どもたちのどのような能力を伸ばすべきなのか、人間にしかできない能力をどう育てるのかが世界の教育界の課題になっています。人を受け入れ、他者と協働できる人間を育てるために、「テファリキ」はよく考えられた教育です。
また、児童学科卒業生には、保育園や幼稚園などの他にも一般企業に就職する学生も多くいます。「テファリキ」は、そういった多様な社会で生きていくためにも学ぶべきことの多い教育です。
エデュケーション・ニュージーランドとの協力協定締結を機に、今後もさらにニュージーランドと交流を深めていきたいと考えています。まずは2023年3月には幼児教育研修を再開し、今後も定期的に実施する予定です。さらにニュージーランドからの留学生も受け入れて、幼稚園から大学院まで学園全体での交流を行い、互いに学び合う環境が整うことを願っています。
テファリキは1996年にニュージーランドで導入された幼児教育のカリキュラムで、0歳から小学校に入るまでの子どもたちの教育課程です。テファリキには「○歳までに〇〇ができるように」という目標はありません。多様な人々との関わりの中で、子どもの主体性を育てることを主眼としているので、集団生活が強制されることはなく、「これをしなさい!」「他の人と同じようにできるようにしなさい!」という指示を出すことはありません。